一人が引っ越すともう一人も引っ越す
妹との共同物件で二年が経過しようとしている頃、私は会社にキレて辞めた。次の転職先も都内か通える範囲だろうと二人とも計算していたが、これが大いに狂って私は海外に転職を決めた。当然引っ越さなければいけなくなった。
私は転職する本人なので仕方がなかったが、問題は巻き込まれて引っ越す羽目になった妹だった。彼女は単に私に誘われて一緒に住み始めたため、予想外の展開に御立腹だった。当たり前だ。
しかし、姉妹二人でいつまでも一緒に住んでいられないだろう事は始めから分かっていたのだし、いつかどちらかが引っ越してもう一人も引っ越さなければいけない事は見えていただろうに、と私は言った。それは分かるが、自分が始めに引っ越すだろうと思っていたから一緒に住み始めた、彼女はと言った。それが誤算だったことも含めて彼女は面白くなかったらしい。何だそりゃ、と私は思った。
とにかく、自分の引越しの準備を進めるかたわら妹の新しい部屋探しに付き合った。私は仕事を辞めていたため自由になる時間が多く、妹と一緒に不動産屋に行って目ぼしい物件を見学したりした。妹の気に入った部屋が見つかった頃、二人とも荷物のまとめに入った。リサイクルショップに連絡して引き取れる物は引き取ってもらった。妹の使っていたベッドと共同スペースにおいてあった古いソファベッドは区の粗大ごみ券を買って処分した。私のベッドは妹が新居に持って行く事にした。
私が日本を離れる日が来たので、私は自分の荷物を詰めたスーツケースを持って空港に行った。妹と両親が見送りに来た。その一週間後、妹は自分の荷物を新居に移し、アパートを引き払い、郵便受けに鍵と大家さんへの菓子折りと「お世話になりました」というメモを入れて引越しを完了させた。
私は新しい土地でホテル住まいをしながらアパートを探し、新しい仕事に就き、慣れないことばかりで手一杯の生活が始まった。妹は入居早々台所の水漏れと湯沸かし器の不具合で大家さん、水道屋さん、ガス屋さんを行ったり来たりする生活だったらしい。私がアパートを見つけてホテルから引越した頃、妹のアパートのほうも落ち着き、お互い新しい生活の中に落ち着きを取り戻し始めたのだった。