二人とも引っ越す
妹と私の墓場アパートにおける狭苦しい共同生活は半年に及んだ。仕事を見つけた私は少しずつ貯金し、来るべき引越しに備えた。何とかそれなりの金額が溜まったころ、二人で墓場アパートを離れて少し大きめの部屋を一緒に借りる事にした。別に妹は墓場アパートに残るのもやぶさかではなかったのだが、なんとなく一人暮らしに気が向かなかった私が一緒に引っ越そうと誘ったのだ。
私は会社帰りに不動産屋を何件か回り、墓場アパートから一駅はなれたところに良さそうな部屋を見つけた。その部屋の見学に行ったとき、ちょっとした騒動が起きた。連れて行ってくれたのは不動産屋に転職したての新人の方だったのだが、この人が道に迷い、間違って別の物件の部屋のドアを開けてしまったのだ。しかもそこには人が住んでいた。さらにこの新人不動産屋さんは謝りも説明もせずに即座にドアを閉めて逃げて来てしまった。
その部屋からヤンキーっぽい若い男の人が走り出てきて、私と不動産屋さんの前に立ちはだかった。怒っている。そりゃそうだ。不審者に対する怒り心頭で説明を求めるその人に、不動産屋さんはしどろもどろになりながら事情を説明した。新人だったので名刺を持っていないのもこのヤンキー兄ちゃんの機嫌を逆撫でした。結局不動産屋のオフィスに電話が行き、彼はこっぴどく怒られることになったらしい。当たり前だ。
しかし部屋自体は良かったため、私は借りたい旨、しかし妹にも一度見学させたい旨を伝えた。後日妹も見学し気に入ったため、この部屋を借りる事にした。
入居して数日後、妹が私に言った。「姉さん、姉さん。この家の横に小さい空き地あるでしょ。そこに祠って言うか墓石あるよ。また墓の横だよ。相当縁があるんだね。」
妹の言うとおりだった。家の横の空き地に何か文字が刻まれた墓石のような石と祠があった。ずっと後になってから知った事だが、弘法大師由来の祠らしい。私が部屋の見学に来た時も妹が来た時も夜だったので暗くて見えず、二人とも気づかなかったのだ。
しかし気にせず二人ともその部屋に二年ほど住んだ。