妹の墓場アパート
海外で数年暮らして日本に戻った時、私はとりあえず実家で一ヶ月のんびりした。実家に住む気がなかったのと、実家がある田舎では仕事が見つからないことと、田舎に住むのが嫌だったのとで、私は東京へ行った。しかし敷金礼金を払う金銭的余裕も仕事もなかった私は、とりあえず妹のところに居候することにした。
妹の部屋は東京にありがちな狭苦しい1Kのアパートだった。私は自分の荷物をまとめた鞄一つで現れた。到着した時は夜で真っ暗だった。そのまま妹のベッドの横の床に布団を敷いて寝た。それが私の引越しだった。
次の日妹は起きて仕事に出かけた。私はパソコンを使わせてもらって職探しを始めた。ふと気づくと部屋が薄暗い。カーテンを開けるのを忘れていたのだ。立ち上がってカーテンを開けた私の目の前に、一面に墓地が広がっていた。
妹はこの墓場の真ん中の物件に4年以上一人で住んでいた。最初は墓場に驚いたが、それよりも部屋の入り口の前の空き地に使わなくなった墓石がごろごろ転がっている事の方がエグイと思う、と何ともなさそうに言い放った。私が引っ越してきたのは夜暗くなってからだったし、部屋に入った時カーテンは閉まっていたので気づかなかったのだ。
このアパートは東京都東部の千葉県も程近いところにあったが、妹はその前は東京都西部の埼玉よりのところに住んでいたらしい。そっちの物件のほうが妹の職場にも近いのになぜわざわざ引っ越したのかと聞くと、大学時代から付き合っている彼氏が東京東部に住んでいて、卒業後近くに住んで欲しいと懇願されたからだと面倒くさそうに答えた。だからこの物件も彼と彼の家族が見つけてきたらしい。
ところで彼女が墓場アパートの前に住んでいた部屋は、高層団地が立ち並ぶとある地区にあった。そしてその高層団地は自殺の名所として有名だった。いくら家賃が安いとは言え、なぜいつもそんな縁起の悪い感じがする立地に住んでしまっているのか。思わず私は唸ってしまった。